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「生井利幸の哲学」と「ベートーヴェンの哲学」

わたくし生井利幸の哲学を目に見える形として具現した場所は、所謂、「銀座書斎」(Ginza Sactuary)。この銀座書斎のコンセプトは「自然との対話」です。銀座書斎と他の作家の先生方の書斎と大きく異なる点は、銀座書斎は、「森の中に本が並んでいる」という書斎空間の違いにあります。

私自身、執筆をするとき、常に「自然との対話」を大切にしています。自然、即ち、植物は、常に、私たち人間に「生きる」を教えてくれます。植物の世話をしっかりとするには、毎日、それなりの時間を必要とします。来る日も来る日も植物の世話をするために相当な手間隙はかかりますが、その分、”物質文明社会に依存した生活スタイル”では決して得ることのできない「心の豊かさ」「心の贅沢」を味わうことができます。

私の場合、「ものを書く」という立場から述べるならば、「自然(植物)との対話」から得る心の贅沢は、直接、私の心の中で、(1)「相当なるエネルギー」、そして、言うまでもなく、(2)「創作意欲」、(3)「創作のためのヒント」となります。

ドイツの作曲家、古典派三巨匠の一人であるベートーヴェン(Ludwig van Beethoven,1770-1827)も、作曲をするプロセスにおいて、「自然との対話」を重要視した人物でした。ベートーヴェンは、ウイーン郊外のハイリゲンシュタット等の”清らかで静寂の雰囲気が漂う森の中”でたっぷりと「自然と対話する時間」を持ち、自身の音楽哲学・精神の中に普遍的なメッセージを挿入しました。その普遍的メッセージは、世界中の文明社会において、”時代の潮流”を超越して、たくさんの人々に対して「より良く生きるための”勇気”と”知恵”」を与え続けてきました。

ベートーヴェンは、その生涯において九つの交響曲を作曲。代表作は、言うまでもなく、交響曲第5番ハ短調作品67「運命」。この曲は、ベートーヴェン自身が、勇気を持って勇敢に、「厳しく、そして、醜い現実」と真正面から向き合い、私たち凡人には想像できないほどの「深遠なる思索」「過酷な創作活動」を介して完成させた作品です。

交響曲第5番においては、最終章の第4楽章に入ると、「長きにわたる辛苦を経験して到達した”歓喜”」が壮大なスケールで表現され、ここに、”唯一無二のベートーヴェンの力強い哲学”が見事に表現されています。私は、幼少時代からベートーヴェン哲学のダイナミズムを自らの魂で捉え続け、長年にわたり、国内外の主要な演奏会にて、世界最高峰の指揮者の音楽解釈に触れてきました。

海外において、芸術家、作家、学者はもちろんのこと、企業経営者、あるいは、ビジネスで大成功を収めた人々の書斎には、大抵の場合、”古典”と呼ばれる書物、例えば、哲学、文学、歴史に関する古い書物が所狭しと置かれているものです。そして、言うまでもなく、本稿で紹介したベートーヴェンの交響曲を始め、音楽史に多大な影響を与えた数多くの名曲が入ったCDも置かれています。

時代の潮流を超越して世界の成功者に長く読まれている名著、そして、長く聴かれている名曲に包含されている哲学・精神には、何らかの普遍的なメッセージが内在しています。文明・文化、そして、時代を超えて世界の人々に影響を与え続けている作品には、”何らかの普遍的な知”がそこにあるのです。

人が一度手にした後、ほんの数ヶ月しか読まれない本、あるいは、数ヶ月しか聴かれない音楽は、時代の流行に左右される”その場限りの作品”です。今の自分の能力を磨き上げ、自分に内在してる可能性を大きく引き出すには、「時代を超えて世界中の人々に愛され続けている作品」と向き合う必要があると私は考えます。

◆弟子を志す方々へのご参考
現在、生井利幸は、他の新作(単行本)と並行して、「ベートーヴェンの哲学」について単行本化する構想の下、原稿を書いています。愛弟子として英語道にお迎えした際には、稽古の一つとして「ベートーヴェンの『精神性』」についても触れる予定です(弟子が備える資質・力量によって、その度合いは異なります)。